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2025/4/21
多発性硬化症治療薬が、活性化T細胞に酸化ストレスを誘導し、細胞周期を停止させることを示した佐藤講師の論文がEur J Immunol誌に掲載されました。
近年、造血幹細胞移植後に合併症である移植片対宿主病においてさまざまな治療薬の開発が進んでおりますが、難治例の予後は依然として不良であり、さらなる研究の発展が望まれます。米国留学中の真島医師らは、多発性硬化症の治療薬として知られるフマル酸ジメチル(DMF)が抗酸化物質であるグルタチオンを不活化し、活性酸素を誘導することによってT細胞の増殖を抑制することを明らかにしました。マウスを用いた移植片対宿主病モデルにDMFを投与すると、臓器障害が軽減し、生存が延長することが示されました。研究成果はBr J Haematol誌(Br J Haematol 2022 Jun;197(6):e78-e82.)に掲載されました。
今回の研究では、DMFがT細胞の増殖を抑制し、細胞死を誘導する分子機構についてより詳細な検討を行いました。DMFは細胞の増殖や分化に関わる転写因子であるMYCの発現を抑制し、細胞周期をG0/G1期に停止させることで、アポトーシスを促進することを明らかにしました。以上の結果はEur J Immunol誌に掲載されました(Eur J Immunol. 2025;55:e202451399.)。自治医科大学の血液学部門では、血液疾患の診療に関する臨床研究を数多く行っておりますが、腫瘍や免疫を対象とした基礎研究にも精力的に取り組み、将来的な臨床応用を目指しています。
Eur J Immunol. 2025 Apr;55(4):e202451399. doi: 10.1002/eji.202451399.