我々はマウスのみならず、様々な大型動物を用いた医学研究を行ってきた。この研究室のロゴはそんな我々の研究を体現したものである。
花園教授はNIHへの留学中よりサルを実験動物として用いてきた。自治医大着任後もサルを用いた研究を継続し、造血幹細胞移植や遺伝子治療の研究を行った(Hanazono, Stem Cells, 2001; Gene Ther, 2002など)。現在でも柴田講師がサルを用いプリオン病の研究を継続している(Hagiwara, PLoS One, 2019他)。
その後、宇都宮大学長尾教授との共同研究を開始し、ヒツジの胎児肝臓へ造血幹細胞を移植し、ヒツジを造血工場とする新しい手法を確立した(Sasaki, Transplantation, 2005)。最近ではこの手法をヒトiPS細胞へと応用している(下記3)。
明治大学長嶋比呂志教授との共同研究では、X-SCIDピッグを作出し(Watanabe, PLoS One, 2013)、免疫不全ピッグを用いた再生医療(細胞移植治療)の基盤を構築した。最近では、X-SCIDピッグをモデルとしたゲノム編集治療法の開発へと展開している(下記2)
我々はゲノム編集技術(CRISPR-Cas9)を利用する新規治療法の開発を目指している。
原助教とポストドクターのSuvd Byambaa氏を中心として、X染色体連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)のマウスモデルとピッグモデルのゲノム修復治療を目指している。
本研究の中でX-SCIDピッグの無菌的な娩出?飼育を行い,X-SCIDピッグの3ヶ月にわたる飼育に成功し(Hara et al., Exp Anim, 2017)、現在ではさらにその長期化を進めている。
本学 病態生化学部門 大森司教授、東京大学 濡木 理教授、明治大学農学部長嶋比呂志教授などとの共同研究である。
2014-2018年度: AMED 革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業(研究代表 東京大学 濡木 理)、2018年度-: AMED 遺伝子?細胞治療研究開発基盤事業 (研究代表 本学 免疫遺伝子細胞治療学(タカラバイオ)講座 小澤 敬也 客員教授)、科研費等を受けて研究を進めている。 なお、平成30年度、小澤客員教授が学内に遺伝子治療研究センター(CGTR)を設立し(センター長?山形教授)、花園教授はそのメンバーの一人となった。
ヒトiPS細胞から造血幹細胞を安定的に産生することは現時点で困難である。
我々は阿部講師を中心として、この課題に長年取り組んできた。これまでに、臍帯血造血幹細胞をヒツジの胎児に移植することで、長期間ヒツジの体内で生着することを報告している(Abe, Exp Hematol 2011; Exp Hematol, 2012; Exp Anim, 2014)。
同様に、ヒツジの体内を造血工場とすることでヒトiPS細胞由来の造血幹細胞の産生が可能であることを見出している。
更なる効率化により安定的に産生することが可能になれば、動物は、ヒト成体?ヒト臍帯血に次ぐ、造血幹細胞の第三のソースになり、現在のドナー不足の解決につながるでしょう。
宇都宮大学長尾慶和教授との共同研究である。
本研究は、AMED 再生医療実現拠点ネットワークプログラム個別課題「ブタ等大型動物を利用するiPS細胞技術の開発」(代表:花園豊)や科研費 基盤C(代表:阿部朋行)の一環として行っている。
ブタは,食性や消化管の解剖生理学的な特徴がヒトに類似していることから,腸内細菌叢研究においても新たなモデル動物になると期待されている。
X-SCIDピッグの研究を通じて、無菌ブタの作出?維持が可能となった。そこで、無菌ブタにヒトの糞便を経口投与したヒト腸内細菌が腸内に定着したブタを作出した。
現在では、ブタの腸内細菌叢の糞便移植後に見られる経時的な変化、食事の影響に関する研究を行っている。
消化器内科学部門山本博徳教授および慶應義塾大学医学部本田賢也教授との共同研究。
原助教はこれらの研究について、2017年度自治医科大学研究奨励賞およびリバネス研究費「メタジェン?腸内デザイン賞」の助成を受けた。